不眠症を引き起こす原因や症状、また不眠症の治療法など詳しくまとめています。睡眠薬を使用しないで行える治療法なども紹介しています。
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不眠症とは

「ここ2、3日気になる事があって眠れない」
「30代にはいってから眠れなくなってしまって仕事に行くのがつらい」
不眠と1言に言ってもいろんなタイプがあります。
ただ眠れないだけならそれほど問題ではありません。睡眠時間は必ず8時間とらないといけないものでもありません。人によって必要とする睡眠時間は違うので、8時間眠れていない、眠れないから不眠というわけではありません。5時間ほどしか寝ていなくても、本人が元気に日常生活を送っているならそれは不眠症ではありません。
ではどのような状態なら不眠症なのでしょうか。
眠れない状態が1ヵ月以上続き、眠れていないために日中にだるい、集中できないなどの何らかの支障が出ており、本人も辛さを感じている時が、治療を必要とする不眠症と診断されます。
不眠症にもいくつか種類があるので、次の項目で詳しく説明します。
不眠症の種類

不眠症にはいくつかの種類があります。
入眠障害
寝つきがわるく、就寝時間になって寝床に入ったものの、なかなか寝付く事ができないまま30分以上経過してしまう。
中途覚醒
夜中に2~3回目が覚めてしまう。一旦目が覚めてしまったらなかなか眠る事ができない。
早朝覚醒
本来起きる予定の時間よりも2時間以上早く目が覚めてしまい、そこから眠れなくなってしまう。
熟眠障害
睡眠時間は確保できているものの、眠ってもぐっすりと眠れた感じが得られなくて疲れも取れない。
自分は不眠症かもと思った場合は、上記のどれに当てはまるのかよく考えましょう。
不眠症を引き起こす主な原因

不眠を引き起こす原因は一つではありません。ストレスや身体的な問題、心の病気など多岐にわたります。
不眠の原因
ストレス
ストレスや緊張は安らかな睡眠を妨げます。真面目で神経質な人ほどストレスを感じやすく、眠れない事に関してこだわるため不眠症になりやすいようです。
身体的な病気
心臓病、高血圧、アレルギー疾患、糖尿病、腎臓病、関節リウマチ、前立腺肥大、脳梗塞、脳出血などが原因で不眠症になる場合があります。この場合は不眠そのものよりも、原因となっている病気の治療を行う事で不眠も改善する事ができます。
心の病気
心の病気は不眠症と深く関わりがあります。多くの心の病気が不眠を伴うからです。近年は複雑な人間関係や社会生活の影響でうつ病になる方が増えています。不眠症だと思っていたらうつ病だったというケースも多々あります。
起床予定時間より2時間以上も早く目覚める「早朝覚醒」と朝は無気力なのに夕方にかけて元気になってくる「日内変動」の両方の症状が見られる場合はうつ病の可能性があるので医療機関を受診した方が良いですね。
薬や刺激物
病気の治療のために服用している薬が不眠をもたらす場合もあります。睡眠を妨げる代表的な薬としては抗がん剤、降圧剤、甲状腺製剤が挙げられます。
睡眠改善薬としてドラッグストアなどで販売されている「ドリエル」などの抗ヒスタミン薬は日中に眠気が出てしまいます。
コーヒーや紅茶などに含まれているカフェイン、タバコに含まれているニコチンには覚醒作用があるため、安眠を妨げてしまいます。カフェインには利尿作用もあるため、夜中にトイレに起きてしまう中途覚醒も増えてしまいます。
生活リズムの乱れ
国から国へと移動して時差がある場合は時差ボケで不眠になる事があります。また昼勤、夜勤などといった昼と夜の両方の時間帯の勤務を行わなくてはいけない場合も体内リズムが乱れて不眠を招く事があります。
環境
光や騒音が気になって眠れない場合があります。寝室の湿度や温度も適切でない場合は安眠する事ができません。
不眠の対処法
不眠を克服するには、まずは自分の不眠の症状と原因を把握し、その原因に対して適切な対処を行う事です。
睡眠薬が必要な場合もあるし、薬を使わなくても生活習慣などを変える事で改善できる場合もあります。
薬物治療法
1ヵ月以上眠れない状態が続いていて日中の生活にも支障が出ており、辛さを感じている場合は睡眠薬を用いた治療が適しています。
現在睡眠薬として使われる主な薬はベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の2種類です。
睡眠作用以外に筋肉の緊張を緩める作用があるため、肩こりなど体の緊張が強い方には適していますが、お年寄りなどに処方するとふらついて転倒してしまう可能性があるので、使う相手を選びます。
睡眠だけに作用するのでふらつきの心配がありません。こちらの方が依存性も低く使う相手を選ばないので人気があります。
ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系以外に、体内の生理的な物質に作用をおよぼす新しいタイプの睡眠薬もあります。オレキシン受容体拮抗薬とメラトニン受容体作動薬です。
オレキシン受容体拮抗薬
目が覚めた状態を維持する際に重要な役割を果たしている「オレキシン」の働きを阻害する事で睡眠を促す睡眠薬です。
メラトニン受容体作動薬
人の体内時計を整える働きをしているホルモン「メラトニン」に働きかける睡眠薬です。体内時計を整える事で自然な睡眠を促す睡眠薬です。
どちらも非常に依存性が低く安全なのですが、効果を感じるまでに数日~数週間かかるため、待つ事ができない方もいるようです。
入眠障害
ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の「超短時間型」「短時間型」に分類される睡眠薬が適しています。
超短時間型
ハルシオン
短時間型
デパス
レンドルミン
エバミール
リスミー
超短時間型
マイスリー
アモバン
ルネスタ
中途覚醒
ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の「短時間型」「中間型」、に分類される睡眠薬が適しています。また「メラトニン受容体作動薬」と「オレキシン受容体拮抗薬」も中途覚醒に適しています。
短時間型
デパス
レンドルミン
エバミール
リスミー
中間型
サイレース/ヒプノール
ユーロジン
ベンザリン/ネルボン
エリミン
メラトニン受容体作動薬
ロゼレム
オレキシン受容体拮抗薬
ベルソムラ
早朝覚醒
ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の「中間型」「長時間型」、に分類される睡眠薬が適しています。また「メラトニン受容体作動薬」と「オレキシン受容体拮抗薬」も中途覚醒に適しています。
中間型
サイレース/ヒプノール
ユーロジン
ベンザリン/ネルボン
エリミン
長時間型
ドラール
ダルメート/ベノジール
ソメリン
メラトニン受容体作動薬
ロゼレム
オレキシン受容体拮抗薬
ベルソムラ
熟眠障害
ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の「中間型」「長時間型」、に分類される睡眠薬が適しています。また「メラトニン受容体作動薬」と「オレキシン受容体拮抗薬」も中途覚醒に適しています。
中間型
サイレース/ヒプノール
ユーロジン
ベンザリン/ネルボン
エリミン
長時間型
ドラール
ダルメート/ベノジール
ソメリン
メラトニン受容体作動薬
ロゼレム
オレキシン受容体拮抗薬
ベルソムラ
非薬物療法
不眠は睡眠薬を使って改善する事もできますが、やはり睡眠薬に抵抗がある方も多いのではないかと思います。
ここでは睡眠薬を使わずに不眠を改善する方法を紹介します。
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起床時間、就寝時間を一定にする
起床するタイミングは、実は体内時計で調整しています。週末だからといって夜更かし、翌日昼近くに起床したり、休日の昼間にがっつり昼寝をしてしまうと体内時計を乱してしまいます。週末も平日と同じ時間に起床し、就寝するように心がけましょう。 -
睡眠時間にこだわりすぎない
一般的に睡眠時間は8時間が良いなどと言われていますが、実は人によって適切な睡眠時間が違います。5時間しか寝ていなくても日中に特になにも支障がなければそれはその人にとって適正な睡眠時間と言えます。「〇〇時間眠らなくては!」と目標を立ててしまうとかえって質の良い睡眠を得られなくなってしまうので、眠気がないなら思い切って眠くなるまで床には入らず、好きなように過ごして下さい。
眠くもないのに無理に床に入っていると熟眠感が減ってしまいます。もし日中に眠気がある時は午後3時前までに30以内の昼寝をして下さい。眠気が取れて夜の睡眠にも差し支えないのでオススメです。
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太陽の光をあびる
太陽の光のような強い光には体内時計を調整してくれる働きがあります。光をあびると、約14時間以降に自然と眠気が生じてきます。朝早く光を浴びる事で夜眠る時間が早くなるので、自然と朝早く起きる事ができるようになります。よく言われている「早寝早起き」ですが、実際には「早起き」する事で早寝をする事ができるようになるのです。照明などで夜に強い光と浴びすぎてしまうと体内時計に遅れが生じて早起きをするのが辛くなってしまいます。
また起床して1時間以内に15~30分の散歩を朝10時までに行うとセロトニンが活性化するので、質の良い睡眠を得られやすくなるようです。
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適度な運動
激しすぎる運動は刺激が強すぎて寝つきを悪くしてしまうため、かえって睡眠の邪魔をしてしまいます。30分くらいの軽いウォーキングのような有酸素運動がほどよい肉体疲労を生み出し、心地よい眠りへと誘ってくれます。管理人の体験ですが、忙しくて運動する時間が取れない時はラジオ体操を行うようにしています。ひとつひとつの動作をきちんと行うと結構きついですが、普段なかなか使う事のない筋肉を使ったり伸ばしたりするのでほどよく疲労してぐっすり眠る事ができます。
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自分に合ったストレス解消法
ストレスが溜まってしまうと快適な睡眠を得られなくなってしまうものです。
ストレスの元をすぐに消すのはなかなか難しい事だと思いますが、ストレスを溜めないように自分にあったストレス解消法を見つける事で解決する事ができます。自分に合った趣味を見つけられると一番良いのですが、友人と話をする、SNSに投稿するなど何でも良いので気持ちがスッキリする方法を見つけましょう。
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寝る前のリラックスタイムを作る
就寝前に副交感神経を優位にさせる事が快眠へ繋がります。ぬるめのお風呂にゆっくり入る、読書する、好きな音楽を聴くなどリラックスする時間を取る事で心や体の緊張をほぐし、質の良い睡眠を得る事ができます。半身浴は心臓への負担が少なく、副交感神経を優位にする事がわかっているのでオススメの入浴方法です。
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寝酒はNG
お酒を飲むと眠る事ができると思っている方も多いと思いますが、実は違います。たしかにすぐに寝付く事ができますが、睡眠自体は浅くなってしまうため、全体的な睡眠の質は落ちてしまいます。起床する予定よりも早く目が覚めてしまう事も増えるので、アルコールを不眠改善のために使うのは間違っています。
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快適な寝室を作る
眠りやすい寝室を作るのも快眠を得るために重要です。ベッドや布団の硬さ、枕などは自分の体に合った物を選びましょう。寝返りが打ちやすい寝具やナイトウェアを選ぶ事も大切です。照明も明るすぎるよりは暖色系の蛍光灯などが向いています。
温度や湿度も大切で、適温は20度前後、湿度は40~70%くらいを保つと良いとされています。
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眠れない事を気にしすぎない
1ヶ月以上眠れなくて日中の生活にも支障が出て辛さを感じている場合は睡眠薬の助けが必要ですが、数日眠れないくらいならあまり眠れない事を気にしすぎないのも不眠にならないための方法です。「眠らなくては」と自分を追い込んで眠気がないのに床の中で時間を過ごしてしまうと余計に眠れなくなってしまいます。眠れない場合は思い切って床から出て、眠くなるまで好きな事をする、眠気が出てきたらさっと床に入る方が快眠を得られるようです。
「眠れないのではないか」と不眠に対して恐怖心を抱くと寝床が緊張する場となってしまい、余計に眠れなくなってしまいます。「どうせいつかは眠くなるはずだから」くらいおおらかな気持ちで受け止めた方が、良い結果に繋がります。
上記のどれをためしてみても不眠が改善しなくてつらい場合は、速やかに医師に相談して睡眠薬の助けを借りましょう。
余談ですが、管理人はレンジでチンするタイプのカイロをお腹や腰にあてて眠るとすぐに寝付く事を発見したので、今ではその方法で毎日眠りに落ちています。真似する場合は低温やけどにお気を付けください。
不眠症の種類と原因のまとめ

不眠症の種類と原因に関して色々説明しましたが、役立てていただけたでしょうか。
眠れない状態が長引くと本当につらいですよね。仕事にも集中できないし、勉強したくても頭に入らない。1ヶ月以上眠れなくて辛い状態が続いているならすぐに医療機関で診てもらった方が良いですね。自分に合った睡眠薬に出会う事ができれば元気を取り戻す事ができます。
そこまで辛くないけど、あまり快眠できていないから改善したいという場合は、薬を使わずに不眠を改善する方法をいくつか試してみて下さい。日頃の運動不足を見直してみたりと、自分の生活パターンを見直す良いきっかけにもなります。
不眠症を改善して毎日楽しく過ごせる日が来るようにがんばりましょう。